訪問看護の事例。病院入院中に余命1週間ほどだろうといわれ、息子様の希望があり看取り目的に急遽自宅退院され訪問看護が始まりました。
退院直後の状態は認知低下もあり意識レベルにムラがあり、現状認知ができず、意思疎通も曖昧でした。また、不穏もあり臥床状態が続き、関節の拘縮もありました。身体に複数のアザを認め、息子様の虐待も疑われていました。
急遽の退院であり、息子様の手技獲得が不十分であったため、訪問看護では吸引手技、点滴のクレンメ操作、自己抜去時の対応など、ひとつひとつ指導を行いました。息子様の介護疲労・ストレスも窺えており、虐待疑いもあったため、息子様の思いの表出の機会をつくりつつ、なるべく負担が増えすぎないよう、どこまでは息子様に依頼できるか、どこまではスタッフが行うべきかを、店舗内でも何度も話し合いケアマネージャー様や往診の先生も一緒に吟味していきました。
徐々にご本人より「食べたい、お腹空いた」とご希望をポツリポツリと話されるようになり、誤嚥リスクはありながらも、経口摂取にトライしていき、寿司、パン、チャーハンなどご本人の好きなものを食べることができるようになりました。そして、栄養状態や全身状態が安定したことで、ご本人・息子様の希望もあった入浴を、毎週行えるようになりました。退院直後はベッド上寝たきりでしたが、継続したリハビリにより、安定して車椅子乗車が行えるようになりました。
余命一週間といわれた方でしたが、今回自宅で2回目の誕生日を迎えることができました。
ターミナルのご利用者様でしたが、ご利用者様・ご家族様にとって「どうしていきたいか」を適宜聴取していき、安心して安全に暮らせるだけでなく、ADL向上など、ターミナルの域を超えたサービスを提供できました。人の「生きること」の可能性に触れることができ、ターミナル=終末といったものの見方が変化し、他のご利用者様への介入の際に、考え方の幅が広がるきっかけになりました。
今後もご利用者様が「やりたいこと」をこまめに聴取するようにし、同じゴールに向かって、引き続き取り組んでいきたいと思います。