ナ ーシングホームについて学ぶ① 施設の特徴や期待される役割

そのほか

人口の高齢化がますます進む中、「早期退院」「病床数削減」などにより、継続的な医療・介護を必要とする人たちの行き場が求められています。退院後の受け皿としては、介護老人保健施設や特別養護老人ホームなどがありますが、短期間しか入所できなかったり、医療的ケアに対応していなかったりするケースが多いです。

そこで注目されているのが、医療的ケアを必要とする方が長期間利用できる「ナーシングホーム」です。

1.ナーシングホームとは?

ナーシングホームとは、介護サービスに加え、医療処置やリハビリなどを提供する集合住宅です。
近年、住宅型有料老人ホームのなかで、日常的に医療的なケアを受けながら生活できる
ナーシングホームが増えています。
高齢者向け施設・住宅と言えば、病状や健康状態の安定した人たちが入所・入居し、食事やトイレなどの介助を受けたり、レクリエーションを楽しんだりするのが一般的です。
必要なケアを受けながら安心して日常生活を過ごせる場所ではあるのですが、
医療従事者の人数が少ないなどの理由から、
医療依存度の高い方を受け入れるのが難しい状況にありました。
ナーシングホームは、一般的な老人ホームに比べ看護師を数多く配置したり、
医師との連携を強化したりしています。
例えば、末期がんの方が痛みを緩和しながらできるだけ楽に余生を過ごすといったように。
ナーシングホームでは、医療依存度の高い方も、日常的に医療的なケアを受けながら生活することが可能です。
“病院を退院したものの、引き続き医療・介護が必要で、自宅や施設で生活するのは難しい
そうした方々が、継続的に医療・介護を受けながら、安心して暮らせる場所がナーシングホームです。

 

2. 介護保険非対象の方も入居できる

「老人ホーム」には特別養護老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などがありますが、いずれも入所・入居条件を60歳または65歳以上に設定している場合が多いです。
これは、介護保険サービスを利用して入居・入所する要介護高齢者を
主な対象にしているからです。
一方で、ナーシングホームは、全国的に受け入れ条件が一律に定められておらず、
事業者が独自に入居条件を設けています。
そのため、なかには60歳未満であったり、介護を必要としない自立レベルであったりする方も入居できるナーシングホームもあるのです。
以前であれば、「年齢や特定疾病対象外で要介護認定を受けられない」という方は、日常生活に介助が必要であっても老人ホームに入居することが困難でしたが、そうした介護保険非対象の方も入居しやすいのもナーシングホームの特長です。

3.ナーシングホームが求められるようになった背景

国民皆保険である日本では、誰もが医療機関を受診しやすく、
比較的少ない自己負担で高度な医療を受けることができます。
そのため、以前であれば入院が必要になっても急性期の病院で治療し、回復期の病院でリハビリを受け、慢性期の病院で継続的に療養するという、切れ目ない医療を受けやすい状況にありました。ところが、人口の少子高齢化が進み医療費が増大することで、全国的に病床数(病院のベッド数)が削減されるようになったのです。
厚生労働省によれば、全国の病床数は1993年の1,680,952床がピークで、
2021年には1,500,057床に減少し、今後も病床数を削減する方針が示されています。
「病床数が減る」ということは、入院費用を抑え医療費の減少につながりますが、継続的に医療・介護が必要な方にとっては行き場がなくなってしまう可能性も出てきます。
家族による介護や在宅医療を受けられる環境がなければ、医療依存度や要介護度の高い方が自宅で暮らすのは困難です。
老人ホームを検討するにしても、日常的に医療処置が必要なケースは入居・入所を断られてしまうケースが少なくありません。
このように、病床数が削減されていくなかで、継続的に医療・介護が受けられる生活の場として、ナーシングホームが必要とされるようになりました。

(参照元  厚生労働省|地域医療構想について)

 

4. ナーシングホームのケア体制

ナーシングホームでは、どのようなケアが受けられるのでしょうか?ここからは
、一般的な老人ホームと比較しながらナーシングホームのケア体制を紹介します。

医療の提供体制

一般的な老人ホームでは、看護師の配置が日中に限られていたり、そもそもなかったりしますが、ナーシングホームでは、24時間体制で看護師が常駐していることが多いです。
それにより、夜間の医療処置が必要な場合も対応できる体制となっています。
また、看護師が常駐していない場合も、近隣の訪問看護ステーションなどと連携し、
24時間365日の訪問看護体制を整備しています。
そのため、例えば、呼吸器の病気があり夜間も頻回にたんの吸引を必要としている、
末期がんでターミナルケアを受けながら穏やかに過ごしたいといったように、
ナーシングホームでは、医療依存度の高い方も必要な医療的ケアを受けながら生活することが可能です。

介護の提供体制

ナーシングホームでは、一般的な老人ホームと同じように、食事や排せつ・入浴などの介助を受けることができます。
「日常生活の介助が受けられる」という点では老人ホームと同じ機能ですが、看護師を数多く配置していたり、訪問看護を受けやすい体制になっていたりするので、その時々の体調に合わせた適切なケアが受けやすいです。
また、ナーシングホームは医療・介護を受けながら「生活する場」であるため、利用者や家族の意思が尊重されやすいのも特長です。
例えば、嚥下(飲み込み)に何らかの問題がある場合、「最後においしいものが食べたい」と思っても、病院では誤嚥(ごえん)の危険性から食事を制限されてしまいがちです。このような場合も、ナーシングホームでは医師や看護師・介護職員などが連携し、可能な限り好きなものが食べられるようにサポートしてくれます。
もちろん、状況によりできることできないことがありますが、
医療・介護を受けつつ自分らしい暮らしを送りやすい場所と言えるでしょう。

 

5.住み慣れた地域で自分らしく暮らす”ためのナーシングホーム

日本では、2025年を目途に地域包括ケアシステム の構築を推進しています。
地域包括ケアシステムとは、高齢者の尊厳保持と自立生活の支援を目的に、
可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで送れるよう支援・サービスを提供する体制のことです。「住み慣れた地域で自分らしく暮らす」とは言っても、自宅・病院・介護施設など生活の場はさまざまです。
しかしながら、病床数削減に加え、老々介護・介護離職などの問題もあり、
医療・介護どちらも必要とする人たちの行き場はなくなっています。
一方で、最近では、医療・介護どちらも継続的に受けられるナーシングホームが増えています。
自宅で生活するのは難しい、介護施設に入居を断られたなどの問題で悩んでいるのでしたら、
「住み慣れた地域で自分らしく暮らす」場として、ナーシングホームを検討されてみてはいかがでしょうか。

ベストリハのナーシングホーム

プロフィール
田口 昇平

作業療法士/福祉住環境コーディネーター2級/取材ライター
作業療法士免許取得後、東京都内のリハビリ専門病院や介護施設などに勤務。2018年よりフリーライターに転身。医療介護従事者への取材をしながら、現場の業務改善や労働環境づくりなど幅広いテーマで執筆。

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